長野を目指すのだが、「しなの」はもう山越えしなければならない。聖高原、冠着を通過すると長大な冠着トンネルに入る。SL時代にはトンネル内で機関士が窒息したという話が残っているくらいの難所だった。このトンネルを抜けると右手は見事なほど視界が開け、山すそを縫うように走る。眼下には善光寺平の絶景が広がり、かつては北海道・狩勝峠、九州・大畑の矢岳越えと並んで、日本三大鉄道車窓風景といわれたものである。山越えの難所でもあり、すっかり珍しくなったスイッチバック(行きつ戻りつしながら峠を越えるジグザグの線路配置)が三か所も連続し、真ん中のスイッチバックは駅になっている。嬢捨駅だ。もっとも「しなの」はスイッチバックを経由しないで三か所とも素通りである。折しも電気機関車に引かれた「ユーロライナー」という臨時列車がスイッチバックに入って、「しなの」の通過を待機していた。山越えが終わり善光寺平に入ると、「しなの」は篠ノ井から信越本線に入る。長野新幹線の高架橋と並行し、犀川を渡れば終点長野である。名古屋から二時間四五分。目まぐるしく変化した車窓風景は休む暇もないほどの充実ぶりであった。